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エネ計画策定遅れ、原発で調整難航 脱炭素裏付けみえず:日本経済新聞(6/12)

原発の将来像をどうするかで調整がついていない(関西電力の美浜原子力発電所3号機)

国の中長期のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画の策定が難航している。2050年の脱炭素に向け原子力発電所の建て替えの是非などを巡り政府・与党内で意見が割れているためだ。計画の原案を5月に示す案もあったが、まだ提示されず策定は秋までの衆院選後になる可能性もある。脱炭素目標の裏付けはまだみえない。

「6月中に原案を示せるか見通しが立っていない」。5月下旬、経済産業省幹部は自民党の総合エネルギー戦略調査会(額賀福志郎会長)の会合でこう説明した。気候変動などを議論する11日からの主要7カ国首脳会議(G7サミット)までの提示が一つの目安だったが、間に合わなかった。

基本計画は原則3年に1度見直している。それをもとに30年度の電源構成も決まる。政府は20年10月に50年の温暖化ガス排出量の実質ゼロを打ち出した。21年4月には30年度の排出量の削減目標を13年度比26%減から46%減に引き上げた。その具体策として今回の計画は注目度が高い。

遅れている理由の一つは原発の扱いだ。経産省は50年実質ゼロには、原発で少なくとも2割程度を発電する必要があるとみる。原発の法定の運転年数は原則40年、例外でも60年までだ。建設中も含むすべての原発36基を60年間動かしても50年度時点で23基に減り、発電量の1割しか賄えない。

「今回で建て替えの道筋を示せなければ日本の原発は無くなる」。こうした声もある経産省資源エネルギー庁は、基本計画への建て替えの明記を望む。建設に時間がかかるためノウハウを持つ技術者が現役を退き、技術継承できなくなると懸念する。ただ、梶山弘志経産相や首相官邸からは慎重な声が上がる。

与党も割れている。自民党の総合エネルギー戦略調査会は5月、原発の建て替えや新増設などを政府に求める提言をまとめた。別途、建て替えなどを推進する議連も設立され、安倍晋三前首相らが顧問を務めている。

一方、公明党は「依存度を着実に低減しつつ、将来的に原発に依存しない社会を目指すべきだ」とする脱炭素の提言をまとめた。経産省幹部は「新型コロナウイルスのワクチン接種が最優先となっている中で、政府・与党内で十分に調整できる環境にない」と話す。

目算が狂った部分もある。30年度の削減目標を経産省は積み上げベースで39%減が限界とみていたが46%減で決着。具体策を巡り環境省との調整に時間がかかっている。

7月には東京都議選、秋までには衆院選と自民党総裁選を控える。選挙が近づくほど原発の建て替えのような不人気政策の打ち出しは難しさを増し、判断は先送りされやすい。基本計画などを議論する有識者による経産省の審議会が最後に開かれたのは5月13日。委員の一人は「今こそ議論すべき大事な時期なのに」と漏らす。

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