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屋根上の太陽光、切り札になるか 既存住宅の設置カギ 脱炭素「46%」への難路:日本経済新聞(5/7)

積水ハウスは太陽光発電パネルを搭載した新築住宅を積極的に販売している

日本の温暖化ガス排出の削減目標の達成に消費者が協力しやすい分野の一つが住宅だ。家庭に由来する二酸化炭素(CO2)の排出量は国内の約15%を占める。環境配慮意識の高まりもあって新築住宅では太陽光発電など再生可能エネルギーの活用が進む。2030年度の目標達成には既存住宅などでの一段の取り組みが欠かせない。

国立環境研究所によると、19年度の家庭部門のCO2排出量は1億5900万トン。13年度と比べれば2割減の水準で、産業部門や運輸部門などよりも削減幅が大きい。住宅産業研究所(東京・新宿)の関博計社長は「家電の性能が上がり省エネルギー化が進んでいるほか、新築戸建て住宅の断熱化が進んでいることも大きい」と指摘する。窓などの断熱性が高い住宅と省エネのエアコンなどを組み合わせたり、発光ダイオード(LED)照明へ切り替えたりすることで、家庭で消費するエネルギーが減少している。住宅大手の温暖化対策の取り組みが加速していることも背景にある。

積水ハウスの20年度の新築戸建て住宅のうち、エネルギー消費が実質ゼロになるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の割合は91%に達した。13年度には半分程度の割合だったが、瓦型の太陽光発電パネルといった敷地形状によらずに再生可能エネルギーを利用できるような機器の開発などで販売拡大につなげた。累計で6万戸以上を販売しており、「最近は在宅時間の増加などで、快適性や省エネを求める顧客のニーズもさらに高まっている」(同社)という。

アパートでの取り組みも進む。大東建託はグループで管理する16万棟のうち、1万5千棟に太陽光発電パネルを設置。今後2年間で1万棟に設置する予定だ。住宅は完成後だけでなく建設時にもCO2を排出し、その対策も課題になる。同社は建設から解体までのCO2排出量をアパートとして稼働している期間の再生可能エネルギーでマイナスにできる建物の建設も埼玉県で進めている。

大東建託の建設から解体までのCO2排出量に配慮した住宅の建設現場(埼玉県草加市)

住宅大手が積極的に取り組むのは建物の付加価値を高めることが受注につながるとの思惑もあるからだ。ただ、30年度に家庭部門でCO2排出量を13年度比46%減の1億1200万トンの水準にするのは容易ではない。資源エネルギー庁によれば、19年度の注文住宅全体に占めるZEHの割合は住宅メーカー施工では47.9%だ。一方、一般工務店が施工することが多い建売住宅ではZEHの割合は1.3%の水準にとどまる。都心の狭小な立地に多い建売住宅は手に届きやすい販売価格が特徴だ。ZEHは施工コストがかさみ販売価格が高くなるうえ、「エネルギー消費の計算も複雑で、工務店の手に負えない」(建売住宅大手)のが普及しない要因だ。

年30万戸前後の水準の新築住宅を30年度までにZEH化できたとしても、国内に約2800万戸ある既存住宅の改修を進めなければ、CO2排出削減のピッチは上がらない。住宅産業研究所の関社長は「住宅分野はストック(既存住宅)が大半を占めるため、リフォームも相当数増えないといけない。現状では目標達成は厳しい」と話す。省エネを推進する社団法人の環境共創イニシアチブ(東京・中央)によればZEH関連の改修は19年度にわずか214戸にとどまる。

太陽光発電パネルの設置に限っても、同様の課題がある。小泉進次郎環境相が住宅やビルへの設置義務化を提言し、4月から関係省庁で協議が始まっている。太陽光発電も足元で新規設置が増加傾向にある新築とは反対に、既存住宅では減少傾向にある。固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り価格が低下傾向にあるうえ、新築に比べて省エネ性能が低い既存住宅では断熱改修なども必要になることもあり、「初期投資が回収できるのか不安を持つ消費者が多い」(住宅大手)と見られるためだ。

太陽光発電を導入した戸建て住宅は19年度時点で全体の9%の268万戸ある。立地や気象条件などを考慮せず、国内のすべての戸建て住宅に太陽光パネルが設置された場合、現状の平均的な住宅用の発電能力で単純計算すると、日本の電力消費の1割超を賄うことができる。太陽光発電パネルや蓄電池の設置コストの低減といった技術の向上や、複雑な減税や補助金の制度の簡素化や認知度向上といった課題もある。家庭部門が日本の脱炭素の実現の切り札になる潜在的な可能性もあるだけに、既存住宅向けに官民をあげた取り組みが必要となる。

 

<ニュース元>

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC050IE0V00C21A5000000/

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