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ウッドショック、住宅木材価格「平時の4倍」の激震:東京経済オンライン(6/14)

ウッドショックがハウスメーカーや中小工務店を直撃している(編集部撮影)

需給の逼迫によって木材価格が平時の数倍に急騰する「ウッドショック」。アメリカで2020年夏ごろからささやかれ始め、日本では2021年3月ごろから表面化した。

「住宅を建築する木材が足りないため、5月ごろから『普段つきあいのない大手メーカーから(柱や梁の継手、仕口の加工を行った)プレカット材の発注が入っている』との話題が業界内で出始めた。ハウスメーカーなどは手当たり次第に発注をかけ、木材取引価格は加工業者の言い値になっている」

国内にあるプレカットメーカー関係者が明かすように、大量の木材を使うハウスメーカーや中小工務店が危機感を募らせている。

木材市場では過去最高値で取り引き

世界的な指標となるシカゴの木材先物市場では5月10日、一時過去最高値の1000ボードフィートあたり1700ドル(18万3600円)を超え、2020年の4倍超となった。IG証券の山口肇リード・ファイナンシャル・ライターは、「年内に需給が緩和する可能性はあるが、しばらくは1200~1500ドルの水準が続く」とみる。

ウッドショックの背景には、住宅ローン金利の低下やテレワークの浸透により、アメリカの住宅需要が拡大したことがある。コンテナ不足や貨物船の減便も重なり、木材の供給網が停滞を余儀なくされたことも需給逼迫に拍車をかけた。

日本では近年、輸入材の増加とともに国産材の供給量が減ってきていた。ウッドショックを受けて国産材を増産しようにもそう簡単にできるわけではない。

日本木材総合情報センターによれば、「梁の材料に使う木材の輸入量は1~4月に前年同期比23%減少して底を打ち、足元では輸入量は増えてきている」(分析担当者)という。ただ、絶対量は圧倒的に不足しており、国土交通省が行った国内の主要建設資材需給・価格動向調査(5月1~5日に実施)によると、木材(製材)の需給状況は「やや逼迫」と判定されている。

ウッドショックにより、とくに苦境に陥っているのは地場の中小工務店だ。地場の工務店は国内の戸建て着工数の7~8割を担っている。全国の工務店を会員とする全国工務店協会の坂口岳統括部長は「実際に影響が目立つようになってきたのは今年の3月~4月から。大手メーカーが木材をガサッと押さえにかかってきた」と語る。

まず、輸入木材が木材加工業者の手元に入荷しない。限られた供給量の中で経営を成り立たせるには、顔なじみの中小工務店より高い値段でも購入してくれる大手メーカーへの出荷を優先せざるをえない。この状況は現在も続いており、中小工務店は資材調達がままならず、追い詰められている。

中小工務店が資金繰りに窮する可能性も

「ウッドショックの影響で請け負った住宅建築価格の見積もりも、引き渡しのメドも立たず、そもそも工事の契約ができていない。工事にたどり着いても1平方メートルあたり最低でも1万円程度のコスト増をかぶっている工務店もある。そのような工務店はコロナ禍で借り入れもかさみ、新たな借金も難しい」(坂口統括部長)。深刻な状況が長引けば、数多くの中小工務店が資金繰りに窮するケースも出てきそうだ。

大手ハウスメーカーも6月に入って動き始めた。大手メーカーの多くはこれまで、木材の発注を3カ月ごとにまとめて行っていた。ところが、「確実に確保できていると断言できるのは8月仕入れ分まで」(大手ハウスメーカー幹部)で、6月に発注する予定の9~11月分の仕入れは様相が変わってきている。

鉄骨系が多い大手ハウスメーカーは「影響は限定的」と口をそろえる(記者撮影)

各社は表向き、「調達には問題ない」と口をそろえ、最大手の大和ハウス工業は「木材の使用量が多い『xevo GranWood(ジーヴォグランウッド)』の一部で、6月見積物件からやむを得ず価格改定をしているが、それ以外はいまのところ影響はない」(広報)。

積水ハウスも木造住宅「シャーウッド」の値上げに乗り出している。「調達について現場では厳しい交渉もあると聞くが、普段から仕入れ先との関係を築いていること、仕入れルートを広げていることもあり、問題は今のところ出ていない」(広報)と言う。両社はそもそも鉄骨系の住宅がメインで木材を使った住宅は少なく、影響は限定的という。

一方、木造住宅がほぼ100%の住友林業では4月の決算発表回でも緊迫感が漂っていた。説明会では「足元の木材価格は期初想定を上回る価格まで上昇しており、今後の懸念材料。(木材価格の上昇分は)価格改定で対応する」などとした。

ただ、「木材製品の仕入れ先との長年の取引で信頼関係があり、一定量を安定的に購買している。主要な木材製品の調達については当面メドがついている」(広報)とする。

同じく木材の使用量が多い分譲戸建てを主力とするビルダーのうち、北関東を地盤とするケイアイスター不動産は12月末までの住宅販売計画分の木材確保は完了しているとしたうえで、「来年1月以降のことは何とも言えないが、ワクチン接種が広がる中で、国内外とも巣ごもり需要による住宅ブームは落ち着いてくる」(同社幹部)と説明する。

分譲住宅最大手の飯田グループホールディングスは「市場の動向を注意深く見守っている」(同社幹部)と静観の構えだ。

住宅価格への影響はわずか?

だが、あるハウスメーカーの関係者は「『影響は限定的』と言っておかないと、建材業者から足元を見られて価格をつり上げられる。逆に『影響なし』と強調すると、『余裕があるなら木材を融通しない』と言われかねない。本当に難しい交渉になっている」と本音を漏らす。

では、住宅を購入する側への影響はどれほどなのか。現在、高騰しているのは梁や柱に使う集成材で、国内では梁は9割、柱は6割を輸入材に頼っている。だが、そうした構造材は家全体の原価の3~4%にすぎない。あるハウスメーカー幹部は、「仮に集成材などの調達価格が1.5倍になっても、1棟あたりの販売価格の上昇は20万円程度」と話す。

例えば、都心部で狭小戸建て住宅を手掛けるオープンハウスが5月に公表した資料では、同社の平均的な販売価格4400万円の住宅のうち、「(ウッドショックによる影響額は)金額にして36万円」と説明している。

一方、アパート建築最大手の大東建託では、カナダ産のランバー材が高騰し、2022年3月期はコストが約60億円上昇。完成工事の利益率を1.5ポイント押し下げる要因になるという。同社の小林克満社長は「ウッドショックを避けることはできない。木材価格の状況、為替の状況に鑑みて早め早めに対応する」と強調した。

住宅設備最大手のLIXILはウッドショックによる新築需要の減少を懸念するが、瀬戸欣哉CEOは「(新築の供給が減っても)中古住宅を買う選択肢は当然、考えられる。中古住宅をリフォームすることになると、水まわりだけではなく、外壁なども重要になってくる」と述べ、リフォーム需要に期待を寄せる。

前出のIG証券・山口氏は「1990年代、あるいは2008年のリーマンショック直前に起きたウッドショックの際は1年半から2年ほど続いた。今回のアメリカ市場での木材高騰はまもなく1年になるが、あと数カ月は高値圏が続いてもおかしくない」と予想する。

プレカットメーカーからは「7月から需給は改善されていくが、価格は年内は高値が続きそうだ」との見方も出ている。2022年の春ごろまで、国内でウッドショックの余波が続くことになりそうだ。

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