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ホンダがEV化前倒し検討 三部社長、EU車新規制に対応:日本経済新聞(7/16)

ホンダの三部敏宏社長は16日、欧州連合(EU)がガソリン車の販売を2035年に事実上禁止する方針を打ち出したことについて「ルールが変わるなら対応するしかない。(電気自動車〈EV〉への全面移行が)早まる可能性がある」と述べた。同社は40年にガソリン車を全廃する方針を4月に公表したが、新たな環境規制に対応して計画の前倒しを検討する。

取材に応じるホンダの三部社長(16日、東京都港区)

日本経済新聞などの取材で明らかにした。国内自動車大手のトップがEUの新規制への対応について発言するのは初めてになる。

ホンダは欧州で全体の2%にあたる約10万台を販売している。三部社長は「当社の電動化計画の妥当性を検証して必要であれば修正していく」と語った。各国・地域の環境規制は「どんどん加速する一方だ。EUもカナダも35年に内燃機関の車は禁止となった。日を追うごとに規制が厳しくなる。当然、国際的な動向に合わせないと商売ができない」と話した。

EV化には巨額投資必要

ホンダは4月、40年の新車販売を走行時に二酸化炭素(CO2)が出ないEVと燃料電池車(FCV)だけにする方針を打ち出した。

EVの開発や生産には巨額の資金が必要になる。1車種の開発には500億円規模の資金が必要とされ、工場の生産ラインをEV用に転換するには1工場あたり100億~150億円かかる。車載電池の生産投資にも研究開発費とは別に巨額が必要になる。

EVへの移行にかかる資金をどう賄うかについては「生産への投資、特に車載電池への投資が非常に大きい」と指摘した。そのうえで、具体的な投資計画について「販売台数をもとにした投資額も計算しているので時期が来たら発表する」と述べるにとどめた。

国内EVは軽自動車がカギ

国内でのEVの販売戦略に関しては「軽自動車がカギになる」との見方を示した。ホンダは24年に軽自動車のEVを発売する。「軽自動車の利用者を分析してどういうEVが受け入れられるか考えている」と語った。FCVについては唯一の量産車である「クラリティ」の生産を今年中に終えることを決めているが、「次の車は必ず出す」として開発の継続を強調した。

ホンダのEV「Honda e」

EVは世界の自動車大手が開発にしのぎを削るほか、新興企業の参入が相次いでおり、米アップルの参入も取り沙汰される。異業種などの新規参入について三部社長は「脅威だと思う」とする一方、「ホンダが新しく造るEVの価値で彼らと勝負していきたい」と強調した。

GMとの連携も強化

ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)とEVや自動運転などの分野で幅広く提携している。三部社長は自動運転には人工知能(AI)などの技術だけではなく車の走行性能も優れている必要があると指摘。「GMとの協力は競合他社との競争を勝ち抜く上で大きなアドバンテージになる」と提携をさらに進化する方針を示した。

4月に公表したロケットなど宇宙関連事業への進出にも触れた。「ロケットの動力の燃焼技術や材料の技術はもともと自動車メーカーの手の内にある。技術を用いる分野を変えただけだ」とし、乗用車や二輪車に事業領域を限定せず、新事業の開発を進める考えを明らかにした。

巨額投資が必須に 販売収益の拡大が不可欠

ホンダが打ち出した「脱エンジン宣言」は国内自動車大手で初となる意欲的な目標だ。電気自動車(EV)の開発や生産にかかる巨費をいかに賄うかが課題となる。
4月に三部敏宏社長が開いた記者会見では2030年に北米や中国など主要市場の新車の40%を、35年に同80%をEVなどにしたうえで、40年にガソリン車を全廃する工程表を示した。これを前倒しすることになれば、EV化に向けたハードルは上がることになる。
ホンダの21年3月期の連結純利益(国際会計基準)は前の期比44%増の6574億円だった。四輪車の販売はコロナ禍から回復傾向だが、事業利益率は1%台にとどまる。
EV化には巨額投資が必要だ。欧米大手は25年までに巨費を投じる。仏グループPSAと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が統合した欧州ステランティスはEVに300億ユーロ(約3兆9千億円)、独フォルクスワーゲン(VW)も350億ユーロ、米ゼネラル・モーターズ(GM)も自動運転を含め350億ドル(約3兆8千億円)の投資計画を明らかにしている。

ホンダも中長期で投資を振り向けていくためには、現在進めている四輪車の構造改革を実現し、販売収益を拡大していく必要がある。
EVは中国が国策として関連産業の振興を図るほか、米バイデン政権も車の電動化による雇用の創出を掲げており、世界的にEVシフトが急速に進むのは間違いない。
来年はホンダが米国の厳しい環境規制「マスキー法」を乗り越える低公害の「CVCCエンジン」を開発して50年になる。規制を技術力で突破することで後発の自動車メーカーから世界大手に飛躍した。EVに懸ける「第二の創業」を軌道に乗せるためには、巨額の投資資金を確保していく企業努力が欠かせない。

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