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「走る蓄電池」企業の味方 EV・太陽光パネル一括販売 たじみ電力 ムダなく発電で電力安く/脱炭素/移動:日本経済新聞(7/28)

地域電力会社のたじみ電力(岐阜県多治見市)は三井物産と組み、電気自動車(EV)と太陽光パネルのセット販売に力を入れる。トヨタ自動車の超小型EV「C+pod(シーポッド)」を企業に1台あたり月3万円で貸し出したうえ、太陽光パネルを無料設置して売電することで企業の電気料金を安くするサービスを今夏に始める。EVは移動手段としてだけでなく「動く蓄電池」として電気料金を抑える役割も果たす。

「多治見市の電力料金を日本で一番安くする」。たじみ電力の磯崎顕三社長はこう意気込む。同社は2011年に多治見出身の磯崎氏が設立。地域電力会社として太陽光パネル設置や新電力事業を手掛けてきた。20年度の電力販売量は約2000万キロワット時で、多治見市の総電力需要の数%にあたるという。

これまで同社は自動車のレンタル事業は手掛けていたが、太陽光パネルとセットでのEVレンタルは初めて。

同社は企業の駐車場に無料で太陽光パネルを設置したうえで、月額約3万円でシーポッドを貸し出すサービスを始める。太陽光パネルで発電した電力でEVを充電することで、発電時から二酸化炭素(CO2)を排出しないEV普及につなげる。太陽光パネルからEVに充電した電力や企業施設で利用した電力料金をたじみ電力が受け取る。

さらにEVの車載電池を「動く蓄電池」として活用する。太陽光パネルからの発電量が多くなると予想される時間帯にEVの充電時間を調整し、夏場などに電力料金が高騰することのある日本卸電力取引所(JEPX)からの電力購入量を抑える。磯崎氏は「大手電力会社と比べて5~10%は電力料金を引き下げられる」と話す。

災害時には太陽光パネルからEVに充電した電力を地域住民がスマホなどを充電するための蓄電池として活用してもらう。

21年度までに計360カ所の駐車場に太陽光パネルの設置を目指している。太陽光パネルの総出力は約3600キロワットになる。太陽光パネルを敷き詰めることで、市内に3つ分のメガソーラー発電所をつくりあげる。

シーポッドは三井物産傘下の三井物産オートモーティブがトヨタから購入し、たじみ電力が企業に貸し出す。シーポッドは2人乗りで最高時速60キロメートル。車幅は1.3メートルで取り扱いが簡単だ。三井物産の下村正樹・中部モビリティ統括は「ただの自動車としてではなく、EVを電力網にも貢献する動く蓄電池として活用する『多治見モデル』を全国に広めていきたい」話す。

EVを巡っては、独フォルクスワーゲン(VW)は3月、移動可能な蓄電池としてのEVは「ゲームチェンジャー」になると説明した。風力や太陽光など再生エネ発電が少ないときは、EVに充電しておいた電力を販売したりすることなどで「将来的には充電料金が無料になる」と言及した。

国際エネルギー機関(IEA)も脱炭素化に向けて再生エネが増えるなか、電力の需給バランスを需要側で調整する「デマンドレスポンス」や電池の重要性が増すと指摘している。自動車会社にとってもただの移動手段を超えた、電力システムの一部を構成する「動く蓄電池」という視点を持ったEV開発の重要性が増す。

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