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オンライン初診、活用ほぼゼロ 医療逼迫も医師動かず:日本経済新聞(8/19)

オンライン診療の拡充が喫緊の課題となっている

新型コロナウイルスの自宅療養者ら向けにパソコン画面などを使うオンライン診療が日本で広がらない。日本経済新聞が情報公開請求で得たデータによると、2021年1~3月の初診からの利用頻度は35道府県で人口10万人あたり月1回未満とほぼゼロだった。医師側は活用に消極的だが、感染拡大で医療は後手に回っている。海外はオンライン化で迅速に対応しており、政府や地域が一体となって促進する取り組みが急務だ。

新型コロナの自宅療養者は全国で7万人以上。最多は東京都の2万人超だ。都医師会によると、都の委託で往診などコロナ患者の在宅診療を手掛ける医師は約550人で療養者を十分に診療できる体制にはない。国は20年4月に対面しなくてもいいオンライン診療を初診から認めたが、1年余りたっても効果的な運用にはほど遠い状況だ。

厚生労働省から得たデータで1~3月のオンライン初診件数を都道府県別に調べた。コロナ患者が急増した「第3波」と重なるが、月平均2400回で全初診の0.1%以下。緊急事態宣言が出ていた11都府県の10万人あたりの初診は月平均2.6回で、最多の栃木県も7回にとどまった。県医師会の稲野秀孝会長は「一部の医療機関に偏り、全体的な広がりはない」と話す。

各都道府県への取材によると、活用はその後も増えていない。感染拡大が深刻な沖縄県の4~7月はゼロ。大阪府は自宅療養者を遠隔で診る医療機関を増やしたが、7月の診療は52カ所と4月の77カ所から逆に減った。東京都は直近の実績を明らかにしなかった。

初診から遠隔対応できる医療機関は全体の6%の約7000箇所。日本医師会はオンライン診療に消極的だ。対面を原則とし、誤診で訴えられる可能性や診療動画が流出するといったリスクも指摘する。医師からは「手間がかかる」「画面越しでは得られる情報が少ない」といった声が聞かれる。

政府は16日、遅まきながらオンライン診療拡充の積極策に乗り出した。医師が活用しやすいように、コロナ患者への遠隔診療の報酬を2倍超に引き上げた。

自治体も地域の医師会との連携などで動き始めた。都医師会は都内の医師と自宅療養者をマッチングし、オンラインで診る取り組みを始める。山梨県は専用アプリを医療機関の機器に設置する業務を担い、神奈川県は年齢などで注意が必要な患者を選びオンラインで重点ケアする。福岡市医師会が始めた遠隔診療に200以上の医療機関が参加する動きもある。それでも新規感染者の過去最多更新が続き、医療の危機は深刻さを増す。

普及が遅れる日本に対し、海外でオンライン診療は急拡大する。米国では20年、コロナ前の30倍の10億回の利用があったとされる。10万人に換算すると月3万回。州ごとの地域制限を撤廃し、ソフトやアプリの規制を緩めたことなどが後押ししている。

中国のオンライン診療大手「平安グッドドクター」は月間約3000万人が利用する。カナダやインド、アフリカでも利用者が増える。キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹は「対面の補完の域を超え、医療の柱になっている」と世界の潮流を説明する。

コロナ禍でオンライン診療を始めた野村医院(東京都)の野村和至医師は「患者にスマートフォンのカメラで喉の奥を撮影してもらうなど工夫すればできることも多い」と話す。入院できない患者を置き去りにしないためにも医師、地域、国が力を結集する必要がある。

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