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基準地価2年連続下落、商業地マイナス拡大 コロナ響く:日本経済新聞(9/21)

東京の都心部ではオフィスの空室率の上昇も(13日午前、東京・丸の内)

国土交通省が21日発表した2021年の基準地価(7月1日時点)は、住宅地や商業地など全用途の全国平均が20年に比べて0.4%下がり、2年連続の下落となった。新型コロナウイルス対策に伴う外出の自粛や訪日する外国人観光客らの需要低迷が長引き、繁華街など商業地のマイナス幅が拡大した。地価の回復にはワクチン接種率の向上に伴って経済社会活動の正常化を進めていくことが欠かせない。

基準地価は民間の土地取引の目安とされる。全用途の全国平均は新型コロナ禍の影響で20年に3年ぶりに下落した。21年の下落率は20年(前年比0.6%)と比べてわずかに縮小した。全国で約2万カ所の調査地点のうち54.1%で地価が下落した。

コロナ禍2年目の調査となった21年は商業地の苦境が目立ったのが特徴だ。全国平均は0.5%下がり、前年(0.3%下落)からマイナス幅が広がった。コロナ禍の長期化で政府や自治体が飲食店への時短・休業を要請したり、旅行の自粛などを促したりする期間も延びた。人の流れが減って店舗や商業施設の売り上げが縮小して、土地の評価をさらに押し下げた。

コロナ禍で「蒸発」した訪日客が戻っていないことも繁華街や観光地の地価に響いている。日本政府観光局(JNTO)によると21年の訪日客数はコロナ禍前と比べると9割超のペースで減少が続く。全国で地価が最も高かった東京・銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」は3.7%下落し、1平方メートルあたり3950万円となった。買い物する中国人観光客でごった返す銀座の街の風景はコロナ禍で一変した。外国人観光客らがもたらしていた活気を失った大阪や奈良の観光地も地価の下げがきつい。

都心のオフィス街ではテレワークの普及やコスト縮小でオフィスを縮小・解約する企業の動きが広がる。オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると、8月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は6.31%で、供給過剰の目安となる5%を7カ月連続で上回った。

国交省は空室率の高止まりが地価押し下げの一因とみる。駅前再開発などによる需要底上げ効果はあるものの、全体のマイナスを補うには至らなかった。

住宅地は全国平均で0.5%のマイナスだったが、下落幅は0.2ポイント縮まった。東京圏と名古屋圏は2年ぶりに上昇に転じた。東京都内では高級住宅地で富裕層の需要が底堅く、埼玉、千葉、神奈川各県では駅周辺など利便性が高い場所を中心に回復傾向がみられた。

工業地は0.8%上がり、前年の0.2%より上昇率が高まった。コロナ禍の下での巣ごもり需要で増えたネット通販に対応し、物流施設の用地を求める動きが広がった。高速道路そばの地域の上昇が顕著で、都市部へのアクセスに適した千葉県松戸市や愛知県飛島村の工業地の上昇率は11~14%と2桁伸びた。

地域別に全用途の動向をみると東京、大阪、名古屋の三大都市圏では大阪圏が唯一のマイナスだった。訪日客への依存度が高く、コロナ対策による外国人の入国規制の影響が大きく出た。東京圏と同じくプラスに転じた名古屋圏はトヨタ自動車など製造業の輸出再開で圏内の工場の稼働率が高まり、地域経済を下支えした。

今後の地価動向はコロナ禍からの経済の立て直しに左右されるとの見方が多い。都市未来総合研究所の平山重雄氏はワクチン接種が順調に進めば人の流れが戻るとして「21年冬から22年夏にかけて飲食店が集まる地域でも地価が持ち直しに向かうだろう」と予想する。

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