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ネット診療の患者負担が割高 平均900円加算、普及阻む:日本経済新聞(9/23)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE06BEM0W1A900C2000000/

ビデオ通話などを用いるオンライン診療の患者負担額が通院時より高くなるケースが相次ぎ、利用拡大を阻んでいる。日本経済新聞が東京都内の医療機関を調べたところ「システム利用料」などの名目で平均約900円の保険外費用が生じていた。国がオンラインの診療報酬を低く設定し、医療機関に医療費以外でのかさ上げを認めていることが、患者の負担増を招いている。医療の効率化に向け、利用しやすい仕組みへの改善が急務だ。

オンライン診療は2020年4月、通院による新型コロナウイルスの感染防止を目的に幅広い適用が認められた。感染拡大が続く中で普及が期待されたが、活用は少数にとどまり「第5波」で増えた自宅療養者への対応でも後手に回った。

日経新聞は厚生労働省に遠隔診療可能と報告した都内1023医療機関を対象に、ホームページの公開情報から保険外費用の加算額を調べた。238機関が「利用料」や「通信費」などの名目で患者負担を求め、無料と明記するのは8機関。平均889円で、4000円近く請求するケースもあった。半数弱はオンライン対応の有無も告知していなかった。

患者の支払いが膨らむ背景にあるのは、オンライン診療が「補完的」と位置づけられていることだ。厚労省は「直接患者に触れられないなど医師が得られる情報に制限がある」として、オンラインの診療報酬を低く設定する。日本医師会も対面での診療が基本とする姿勢を崩していない。

例えば、慢性疾患の医療費が初診の対面で3560円ならオンラインでは2820円。3割負担の患者の支払額は各1070円、850円となり、再診でもオンラインが3割ほど安い。ただ、900円を加えると多くの診療で逆転する。システム提供大手のMICIN(東京・千代田)がオンライン受診した約700人に聞いた昨夏の調査では4割が「自己負担が増えた」と答えた。

厚労省は、医療機関が患者に対して診療システムなどでかかる費用を保険外で請求することを認めている。ただ、金額の目安は示しておらず「医療機関は診療報酬の差で生じる収入減の穴埋めに使っている」(都内の医師)。これらはすべて患者の全額負担となり、保険診療の枠外で支払額が積み上がる構図だ。

オンライン診療は医療資源の効率的な活用に寄与し、待ち時間の短縮などメリットが大きい。今後は患者に加えて医師の高齢化も進み、離島やへき地で対面医療の継続が困難となる可能性がある。長期的な医療費の抑制にもつながることから、海外では有力な選択肢となっている。

17カ国・地域の精神科のオンライン診療を調べた慶応大学の木下翔太郎特任助教によると、医療機関に入る報酬が対面より低く設定されているのは日本と中国の一部だけ。英国では診療アプリなど医療サービス全体が保険適用の対象で、患者が気軽にオンラインか通院かを選べる制度が根付く。

日本でも8月、コロナ自宅療養者の遠隔診療の報酬額が引き上げられたが、それ以外の通常医療の環境は厳しいままだ。キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹は「経済的メリットを生む(オンライン診療など)デジタルヘルスの初期コストは保険者負担とし、社会全体で普及を後押しすべきだ」と主張する。

追加費用なしでオンライン診療を行う多摩ファミリークリニック(川崎市)の大橋博樹院長は「患者が利用料ではなく、診療内容で医療機関を選べることが重要だ」と話す。高齢化社会や今後のパンデミック(世界的大流行)の到来に備え、対面とならぶ医療の柱に据える必要がある。

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