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「CO2フリー電源、30年に6割」 北海道電力の藤井社長:日本経済新聞(10/12)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC102T00Q1A011C2000000/

 

インタビューに答える北海道電力の藤井裕社長(8日)

北海道電力の藤井裕社長が日本経済新聞の単独インタビューに応じ、2030年をメドに二酸化炭素(CO2)を排出しない電源を全体の6割(21年3月期は約3割)に高める計画を明らかにした。50年を目指す発電部門でのCO2排出実質ゼロ(カーボンゼロ)に向け、水素やアンモニアによる発電の導入も検討する。

藤井 裕氏(ふじい・ゆたか)
1981年(昭56年)宇都宮大工卒、北海道電力入社。室蘭支店長や人事労務部長などを経て15年取締役、16年副社長。19年から現職。北海道出身。65歳

藤井氏は「(再エネの余剰電力で)本州への送電や、水素を製造して輸出するなど、CO2フリーエネルギーの基地になれる」と述べた。カーボンゼロの最大の原動力は再生可能エネルギー比率の拡大と新たな電源の開拓だ。

寒さが厳しい北海道の冬の電力需要は「ピーク時でおよそ540万キロワット」(藤井氏)。同社の推定によると、太陽光や風力などの再エネ電源に加えて停止中の泊原子力発電所(北海道泊村)を再稼働すれば、ピーク時と同程度の非化石電源を確保できる。水素とアンモニアは脱炭素実現へのプラスアルファとして計算する。

水素は燃やしてもCO2が出ず、火力発電所などの既存設備を活用できる可能性もある。政府は「グリーン成長戦略」で50年までに2000万トン程度の水素導入を目指しており、北電も複数社と共同で洋上風力の発電電力で水素を製造する調査を始めた。

北海道では電力需要が下がる時期には再エネ発電の出力制限が検討されるなど、季節や天候によっては電気が余っている。余剰電力を水素に換えられれば再エネ発電を止めずにすみ、電池代わりにもなる。「電池なら電気だけだが、水素なら石油を使うところでも活用できる」(藤井氏)というメリットもある。

北電の泊原子力発電所(10月)

もっとも、計画は12年から停止中の泊原発の再稼働が前提。藤井氏は「まだ原子力にご理解いただけない方がいるのは承知している」とした上で、気象条件に左右されない電源を再エネ電源と組み合わせて使う必要があるとの考えを強調した。

泊原発再稼働に向けた原子力規制委員会の審査は13年の申請から8年が経過。同時期に申請をした他原発は全て再稼働している。藤井氏は「22年9月をめどに規制委への説明が一通り終わるよう進める」と語るが、想定通り進むかは見通せない。

既存の石炭火力発電所の段階的削減や水素の製造コスト、需要開拓など乗り越えるべきハードルは多いが、慎重な北電が思い切って脱炭素へとカジを切った。本気度と実行力に注目したい。

(井田正利)

再エネと原子力の両立に自信、藤井社長の一問一答

北海道電力の藤井裕社長はカーボンゼロの実現に意欲を示した(8日)

藤井社長との主なやりとりは以下の通り。

――カーボンゼロに向けて、北海道でどのように取り組みますか。

「北海道は再エネの宝庫だ。現在、太陽光など再エネの発電規模は470万キロワット程度。洋上風力のポテンシャルも大きく、冬場に540万キロワットに達する電力需要を超えるのが見えてきた」

「北海道は石油需要が高く、暖房消費も多い。一方で電気もふんだんにあり、余剰電力による水の電気分解で水素を作れるようになればチャンス。オール北海道で取りにいきたい」

――泊原発の位置づけは。

「原発はCO2を出さない。燃料価格は安定しており、電気料金も安く維持できる。将来を考えればやっていかなければ。環境を守りながら経済活動を続けるには原子力が必要だ。再エネと原子力を両立していく」

――再エネ拡大で送電網の容量不足も指摘されています。

「再エネ発電所の多い地方部は送電容量が小さく、まずは地元で(電気を)使うのが大事だ。送電容量が余る時間帯に再エネをつなぐ『ノンファーム型接続』もある。その後に蓄電池や送電網、本州への海底ケーブルといった議論になる」

北海道では洋上風力発電導入への期待も高まっている=ロイター、写真は英国

――北海道でも新型コロナウイルスの感染対策が緩和され始めています。

「特に観光への打撃が大きい。ワクチンや、研究が進む治療薬などによって人の動きが戻ることに期待したい。感染対策をしながら電気の安定供給に努める」

――自民党の岸田文雄総裁が新首相に就任しました。

「岸田首相は『新時代共創内閣』を掲げている。エネルギーのS+3E(安全性の確保と経済効率性、安定供給、環境適合性)を国の政策として支えてもらうとともに、コロナで疲弊した分野への経済的支援にも取りかかってほしい」

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