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エネルギー基本計画、なぜいま改定したのか:日本経済新聞(10/22)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA21DGX0R21C21A0000000/

 

政府は22日、新しいエネルギー基本計画を閣議決定した。発電に占める再生可能エネルギーの比率を2030年度に36~38%と、19年度実績から倍増させるのが柱だ。なぜいま改定したのか。4つのポイントから読み解いた。

・エネルギー基本計画とは何か
・今回の改定で何が変わったか
なぜこのタイミングで決定したのか
・温暖化ガス46%削減の道筋はみえたか

(1)エネルギー基本計画とは何か

太陽光発電パネル、火力発電所、原子力発電所

資源が乏しい日本にとって、電気やガスなどのエネルギーをどう確保し、どう使うかは国の将来を左右する。その中長期的な見取り図を示すのがエネルギー基本計画だ。2002年にできたエネルギー政策基本法に基づき、国が03年に初めて定めた。おおむね3年ごとに見直しており、22日に閣議決定したのは第6次の計画にあたる。

計画のなかで特に注目されるのが、どの発電方式で将来の電気の何%を賄うかという電源構成の目標だ。電気は液化天然ガス(LNG)などを使う火力のほか、太陽光や風力を活用した再生可能エネルギー、ウランを燃料にした原子力によって生み出す。日本は温暖化ガスの4割を発電部門が排出する。電源構成に占める火力の割合を減らし、再生可能エネルギーや原子力を増やせば温暖化ガスの排出量を抑えられる。

地球温暖化に対応するため、当初は原子力をいかに増やすかが課題だった。10年に策定した第3次のエネルギー基本計画は30年に向けて原子力発電所を「少なくとも14基以上」新増設する方針を盛り込んだ。ところが、11年に起きた東京電力福島第1原発の事故をきっかけに、状況は一変する。「脱原発」の世論が高まり、新増設が難しくなったためだ。いったん停止した原発の再稼働もままならなくなった。

こうした状況を背景に、国は原子力への依存度を減らす方針に転換した。18年の第5次のエネルギー基本計画で再生エネを初めて「主力電源」と位置づけた。

(2)今回の改定で何が変わったか

前回の計画との大きな違いは、気候変動対策を最大の目的とした点だ。脱炭素は世界の潮流となっている。日本も菅義偉前首相が20年10月、50年までに排出量を実質ゼロにする方針を打ち出した。21年4月には中間目標となる30年度に13年度比46%減らす目標を掲げた。新たな計画はこれらを実現するための政策を列挙した。

具体的には、30年度の電源構成を大きく見直した。再生エネは「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組む」と強調し、前回計画で22~24%だった比率を36~38%に引き上げた。火力は56%から41%に下げる。新たに温暖化ガスを排出しないアンモニアと水素を燃料とする発電で1%を賄う。

一方で原子力は20~22%に据え置いた。 「可能な限り依存度を低減する」という前の計画の表現を踏襲しつつ「必要な規模を持続的に活用していく」と加えた。ただ、リプレース(建て替え)や新増設は記さなかった。14年の第4次計画で表現を削除してから建て替えや新設を封印したままだ。

(3)なぜこのタイミングで決定したのか

政府は前回計画で22~24%だった再生エネ比率を36~38%に引き上げた=ロイター

18年につくった前の計画から3年になる21年を見すえ、政府は20年10月に本格的な改定作業を始めた。一時は原案を21年春に公表する案が浮上した。気候変動問題を主要政策に掲げたバイデン米大統領が登場したためだ。しかし、原発の扱いや再生エネの導入量の見通しをめぐる省庁間の調整に手間取り、原案の公表は7月にずれ込んだ。

10月に発足した岸田政権は、原発の活用に積極的な姿勢を見せた。自民党の甘利明幹事長は日本経済新聞のインタビューで耐用年数が近づく原発について、開発中の小型モジュール炉(SMR)を実用化して建て替えるべきだと提唱した。

10月末に英国で始まる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に間に合わせるため、政府は菅前政権がまとめた原案を22日にほぼそのまま踏襲し、閣議決定した。原発の扱いをめぐる議論は持ち越しとなった。

(4)温暖化ガス46%削減の道筋は見えたか

新潟県の東京電力柏崎刈羽原発の6号機(右)と7号機=共同

経済産業省が21年春にまとめた推計は、30年度の排出量は従来の取り組みの延長線では13年度比39%しか減らせないというものだった。太陽光の用地不足を考慮して、再生エネの比率を30%前後と見積もっていた。その後、排出削減目標に辻つまを合わせるため再生エネの比率を引き上げた。その上積み部分は実現できる根拠が薄い。

原子力で電気の20~22%を賄うには電力会社が原子力規制委員会に稼働を申請した全27基の稼働が必要になる。福島第1原発事故から10年たっても再稼働にこぎ着けたのは10基。審査の合格と地元の同意が必要なため政府の掛け声だけで進まない。 46%排出削減を実現する道筋はまだ見えていない。

50年の排出実質ゼロは道筋がさらに不透明だ。現行ルールで原発の運転期間は最長60年。建設されたすべての原発を60年間めいっぱいに運転しても50年に寿命が残る原発は20基を下回る。60年代にはゼロになる。

温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現するために、原発の新増設や建て替えが必要との意見は根強くある。しかし、今回の計画は原発の活用に関する踏み込んだ記述を避けた。

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