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「石炭火力全廃を」日本に圧力 31日にCOP26開幕 新興国、一層の燃料高懸念:日本経済新聞(10/25)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA15C540V11C21A0000000/

 

英国はCOPで石炭火力発電所の早期廃止を求める。写真は南アフリカの石炭火力発電所=ロイター

地球温暖化対策を議論する第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の31日開幕まで1週間を切った。議長国である英国は石炭火力発電の早期廃止を主要議題にする意向で、2030年度でも電源の約2割を石炭火力に頼る日本にとって厳しい会議になりそうだ。足元のエネルギー価格高騰が経済活動に影響を与えかねないとの懸念が浮上する中、新興国が慎重姿勢を強める可能性もある。

議長国・英国、日本に決断促す

「日本が国内の石炭火力を廃止する方針を打ち出すことを望む」。英国のジョンソン首相は13日、岸田文雄首相との電話協議でこう求めた。この要請は英国側の発表には明記されたが日本側の公表資料に記載はない。

石炭火力は発電時の二酸化炭素(CO2)の排出量が多い。温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」は、地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標を掲げる。国連は目標達成には50年ごろのカーボンゼロ(実質的な炭素排出ゼロ)が必要で、「実現には石炭火力の早期廃止」(グテレス事務総長)が不可欠とみる。

西欧諸国やカナダなどすでに全廃を決めた国は多い。米国も35年までの電力部門の脱炭素を掲げる。ジョンソン氏は9月、「先進国は30年、途上国は40年までに石炭への依存を断つよう求める」と表明した。

日本はこのほど決めたエネルギー基本計画に、30年度の発電の2割弱を石炭火力で賄う方針を盛り込んだ。再生エネ導入が遅れ原子力発電の再稼働も進まず、ジョンソン氏が求める「30年までの全廃」を約束することは難しい。批判の矢面に立たされかねない。

COP26は11月12日まで予定し、1~2日には、バイデン米大統領ら各国首脳がリーダーズサミットを開く。バイデン氏は約10人の閣僚と共にCOP入りするという。

ここに来て新たな焦点の一つになっているのが、市場の変調をどうとらえるかだ。脱炭素のペースをはやめすぎると、経済成長の足かせになるとの意識が新興国に広がる可能性はある。他方、干ばつや海岸の浸食など気象変動の深刻化を見逃すことはできない。

世界では脱炭素投資が広がり、化石燃料への投資が急速に減る。冬場の需要に向けてガス需要が高まっており、価格は急騰。ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物の期近物も10月20日、世界的な経済回復を背景に7年ぶりに1バレル84ドル台を記録した。石炭火力削減の結果として、中国は電力不足や停電にも陥った。

石炭火力の海外輸出に関し、今後支援しない方針を日本や中国などは表明済み。中長期に脱炭素を目指す方向では足並みがそろったとしても、国内に必要な電力を賄うために石炭火力を使う方針は溝がある。

成長で増える電力需要に対応するため、英国が主張する石炭火力の早期全廃や化石燃料の低減に反発する国もある。インドやロシアなどだ。すべての参加国が同意するような形での包括的な合意は難しいとみられる。

COPでは各国が温暖化ガスの削減をどう進めるかを盛り込んだ「NDC」と呼ばれる国別の削減目標と、その実行計画も焦点となる。日本は30年度に13年度比46%削減する目標を事務局に提出。世界最大の排出国である中国、第3位のインドといった新興国からいかに具体案を引き出せるかがカギになる。

今後強まりそうなのが、途上国の脱炭素を支援するため先進国へさらなる資金や技術支援を求める圧力だ。19年までに途上国支援は約800億ドル(約9兆円)に積み上がったが、COP26では1000億ドルまで増やせるかが焦点になっており、25年以降の支援策も議題になる。

自動車の脱炭素でも溝深く

日本にとっては別のテーマでも難路が待つ。

COPでは、温暖化ガス排出で一定の量を占める自動車分野の脱炭素化も議題になる見通しで、車のゼロエミッション化に積極的な西欧諸国や自治体、一部の自動車メーカーなどは、ガソリン車の廃止とその時期を明記した文書を会議にあわせてまとめるよう動く。

欧州連合(EU)はハイブリッド車を含めた形で、ガソリン車の35年までの禁止を打ち出した。米国の一部州も35年までの販売禁止を決めた。

日本は35年までの「電動車以外の販売禁止」という方針を明らかにしているが欧州と開きがあるのが実情だ。電動車の中に、ガソリンも使うハイブリッド車を含んでいるためだ。日本の自動車メーカーの電気自動車(EV)化の動きは鈍く、欧州などが主導する合意文書に国レベルで賛同できる見通しが立たない。

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