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再生エネ不足で電力逼迫も 化石燃料は開発急減 排出ゼロには10年で4倍16兆ドルの投資必要:日本経済新聞(10/25)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB154O30V11C21A0000000/

 

スペインでは風力発電の発電量減少がエネルギー危機の一因になった=ロイター

再生可能エネルギーへの投資拡大が急務になっている。脱炭素の目標を達成するには再エネの投資額を4倍にし、化石燃料の減少分を埋めなければならない。化石燃料の減少が速すぎても供給不足を招く。欧州や中国でエネルギー危機が相次ぐなか、移行期の需給コントロールが課題として急浮上している。

米カリフォルニア州が電力の安定供給に苦心している。19日には年内に閉鎖する予定だった火力発電所の23年までの操業延長を決めた。2045年に脱炭素を実現すべく火力発電所の閉鎖を決定してきたが、太陽光発電の発電量が落ちる夕方の供給不足が問題となり延長を繰り返している。

15年のパリ協定では産業革命以降の気温上昇を1.5度に抑える努力目標が示された。達成に向けて50年までに温暖化ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を目指す国や地域が増えている。英BPの試算ではエネルギー構成のうち再エネなど非化石燃料の比率は15%から80%近くに高めなければならない。

再エネへの投資は不足している。ノルウェーの調査会社ライスタッド・エナジーの推計によると実質ゼロ(二酸化炭素のみ)の達成には30年までの10年間に、投資額を合計で約16兆4000億ドル(約1900兆円)と、過去10年の4倍に増やす必要がある。普及期には投資効率も低いため先行して金額が膨らむ見込みだ。過去10年の化石燃料への投資を上回る巨額投資となる。

欧州のエネルギー不足は、風が吹かず風力の発電量が低下したことも響いており、貯蔵や需給調整の課題に対応した技術革新が必要になる。

一方、化石燃料への投資は急減する勢いだ。

13日、欧州連合(EU)は北極圏の新戦略を発表し、化石燃料の開発を停止するよう世界に提唱することを掲げた。同地域では風力など再エネの開発を目指す。

米地質調査所(USGS)の推定では、北極圏には世界で未発見の石油の13%、天然ガスの30%が埋蔵されている。現在の欧州のガス不足を考えると欠かせない資源にみえるが、それでも脱炭素シフトは揺るがない。

英BPの試算では、新規の油田開発をやめると石油生産量は年率4%強のペースで減少し、現在の日量1億バレル弱から50年には2500万バレル程度まで低下する。ネットゼロのシナリオで目指す水準と合致するが、問題は当面の減少ペースが再エネに置き換わる速度を上回ることだ。50年には帳尻が合うとしても移行期間である30~40年代には最大1800万バレルが不足し、需要の4分の1を満たせない計算になる。

相対的に温暖化ガスの排出量が少なく、当面は需要が伸びる天然ガスでは不足がさらに顕著になる。ガス田を新規開発しなければガスの生産量は年率4.5%減り、50年には現状の25%に低下する。ネットゼロのシナリオ通りに再エネへのシフトが進んでもガス需要の半分も満たせない計算になる。

「50年にネットゼロを達成しても、石油や天然ガスの開発への投資は引き続き必要になるだろう」(ライスタッド・エナジーのヤラン・ライスタッド最高経営責任者)との専門家の見立てとは裏腹に、新規投資は急速に減っている。

英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルはオランダの裁判所に二酸化炭素の純排出量を30年までに19年比で45%減らすよう命じられた。カナダのTCエナジーが進めていた米国への石油パイプライン計画は、バイデン米政権が環境保護を理由に認可を取り消し中止となった。

マネーの圧力も増すばかりだ。米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によると、世界で79の主要金融機関が石油やガスへの資金供給を絞っている。欧州復興開発銀行は7月、22年末までに石油・ガスの開発事業への投資をやめると表明した。

天然ガスはすでに調達競争が激しい。中国は今年の液化天然ガス(LNG)輸入量が日本を抜いて世界最大になる見込みで、国有の中国海洋石油(CNOOC)はカタールと22年から15年間の長期契約も締結した。欧州も石炭火力から天然ガス火力へシフトを進めてきた経緯があり、LNGの輸入拡大に動いている。

パキスタンは天然ガス在庫が不足し、足元で高騰しているLNGをスポット(随時契約)で購入せざるを得ない状況で、冬場の停電リスクも高まっている。ブラジルも水力発電の不調でLNGの輸入を拡大している。

国際エネルギー機関(IEA)は10月発行の報告書で「化石燃料と低炭素燃料の供給を両方とも十分に確保することがエネルギー安全保障のために不可欠だ」と指摘した。現在は歴史的なエネルギーの転換期にある。移行時のリスク管理を強化しなければ電力危機は頻発してしまう。

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