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EV電池、レアメタル再利用 住友鉱山が国内で安定確保:日本経済新聞(11/24)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC126YK0S1A810C2000000/

 

コバルトやニッケルを効率的に回収できる技術を確立した=住友金属鉱山提供

住友金属鉱山が電気自動車(EV)用の電池に含まれるレアメタル(希少金属)の再利用を始める。コバルトやリチウムで、鉱石からの抽出と同等の品質、コストを実現する世界初の技術を確立した。希少資源は争奪戦の激化が懸念される。中国が高いシェアを持つ品目もあり、経済安全保障の観点でも重要になる。EV電池の安定生産に向けて、希少資源が国内で循環する流れを確保する。

EV用電池で主流のリチウムイオン電池は、正極材と呼ぶ主要部材の一つにコバルトやリチウム、ニッケルなどのレアメタルを使う。EV向け需要により、価格は上昇基調が続く。リチウム価格は1年で2倍以上になり、現在は1キログラム30ドル弱(約3400円)。コバルトは8割上昇し、1トン6万ドル程度で推移している。

住友鉱山は銅の製錬ノウハウを生かし、調達した車載電池を砕いた電池粉を加熱して、銅とニッケル、コバルト、リチウムを低コストで取り出す世界初の技術を確立した。酸素濃度や温度を調整することなどにより目的の金属を選び出す。リチウムは不純物と一緒に分離されてしまうが化学処理によって効率よく取り出せる。

リチウムの場合、鉱山抽出材の取引価格が1キログラム5~6ドルに下がっても、コスト競争力を維持できるとしている。ニッケルやコバルトも価格が過去の相場低迷期と同程度になっても再利用材料に優位性があるという。

JX金属や三菱マテリアル、ベルギーのユミコアなどが再利用事業に取り組んでいる。レアメタルの抽出は高価な薬品を使う方式が中心でコストに課題があった。住友鉱山は品質と採算性を両立して量産するメドがついたとしている。

新設備は国内で2023年にも稼働させる。1年間に7000トン前後の電池粉の処理能力を検討する。現在主流のニッケルとマンガン、コバルトを使う車載電池であれば、取り出せる資源量はコバルトで約200トンとみられ、単純計算でEV約2万台分に当たる。投資額は数十億円のもようだ。

コバルトは、生産量ではコンゴ民主共和国のシェアが約7割、加工量で中国が6割に達するとされる。鉱石の採掘に児童労働を使うケースが指摘されており、コンプライアンスや地政学上の調達リスクもある。米テスラがリチウム鉱床を取得するなど、自ら権益確保に動く車メーカーもある。

欧州連合(EU)は20年12月にまとめたリチウムイオン電池リサイクルに関する新しい規制案で、レアメタルの種類ごとにリサイクル材料が全体に占める比率を示した。30年までにコバルトでは12%、リチウムとニッケルはそれぞれ4%とした。独フォルクスワーゲングループが廃棄された車載電池からレアメタルを回収する試験を始めるなど自動車メーカーも規制をにらんだ取り組みを始めている。

一般にEV用電池は10年使うと容量が7割程度にまで下がり、交換が必要となる。自動車向けは定置用の蓄電池などにリユースされるため、廃電池が出回るのは時間がかかり、「再活用が本格化するのは35年以降ではないか」(非鉄幹部)との見方がある。住友鉱山は当面、少量の電池粉を専門業者などから回収し、取り出したレアメタルを自社で生産する正極材に活用する。先行投資により、廃電池が浸透する段階で市場を握る戦略を描いている。

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