ニュース記事

石油備蓄放出、市場に響かず 規模不足でNY原油2%上昇:日本経済新聞(11/24)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB245CJ0U1A121C2000000/

 

日本の備蓄放出で、価格抑制策としての売却は初めてだ(鹿児島県の志布志国家石油備蓄基地)=共同

原油相場が高止まりしている。バイデン米政権は23日に石油の戦略備蓄を日本、中国などと共同で放出すると発表したが、足元の需給逼迫を解消するには放出規模が不十分との見方が多く、国際相場はむしろ上昇した。ただ世界的な原油在庫には余力があり、来年には供給が過剰に転じるとの観測も強い。

原油価格の国際的な指標であるニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は、バイデン米政権が在庫放出を発表した後に上昇。23日終値は1バレル78.50ドルと前日比で2%上昇した。10月下旬には85ドル台と7年ぶり高値を付けており、なお高水準で推移する。

今回の備蓄放出は米国が各国に要請したものだ。米国は今後数カ月かけて、石油の戦略備蓄を5000万バレル放出する。インドは500万バレル、英国は150万バレルを放出すると表明した。中国と韓国も協調して放出する。

日本政府は国内の2日分程度の需要に相当する約67万キロリットル(420万バレル)の放出を検討している。備蓄の一部は新しい石油と入れ替えるため随時売却しており、2022年度に予定する売却を21年度内に早める。年内にも入札を始める。日本の備蓄放出で、価格抑制策としての売却は初めて。

ゴールドマン・サックス証券によると、中国などの放出分を含めると7000万~8000万バレル規模になる見込みだが「現在の世界的な供給不足を1カ月分余り埋めるにすぎない」(同証券の真壁寿幸氏)。原油相場を冷ますには不十分という。過去に国際エネルギー機関(IEA)が主導した備蓄放出は日量200万~250万バレルだった。

IEAのデータをもとにした推計では、石油の世界供給は2021年平均で日量100万バレル規模の不足となる見込み。世界経済の正常化に伴い需要が回復しているためだ。欧州やアジアで天然ガスの価格が高騰し、割安になった原油を代替的に使う動きも広がる。北半球が冬場を迎え、足元の需給逼迫感は強い。

もっとも、石油の世界的な在庫にはまだ余裕もある。推計によると、経済協力開発機構(OECD)加盟国の民間在庫は今年10月末時点で28億バレル弱。1年前より1割少なく、過去5年平均を2億バレル余り下回るが、消費量の60日分程度に相当し、適正水準の範囲内との見方もある。

国家備蓄を含めた9月末時点の石油在庫は米国が18億8000万バレル強で、消費量の93日分だ。日本は140日分を超え、フランスとドイツも100日分を上回る。

今後は供給が過剰に転じるとの見方は多い。石油輸出国機構(OPEC)のバルキンド事務局長は「12月にも石油供給が過剰に転じる」との認識を示す。OPEC加盟国とロシアなどでつくるOPECプラスが協調減産の縮小を続ければ、22年平均で日量200万バレル程度の供給超過になるとの推計もある。

足元では欧州で新型コロナ感染が再拡大し、需要回復が鈍るとの懸念が強まっている。原油相場が今後は弱含み、「来年3月末までに60ドル台への下落がありえる」(東レ経営研究所の福田佳之氏)との声も聞かれる。

一方で、米国などの備蓄放出を受けて、OPECプラスが「増産ペースを遅らせる可能性がある」(日本総合研究所の松田健太郎氏)との観測も浮上している。備蓄放出で原油価格が一時的に下がれば、米国のシェールオイル生産企業の投資意欲を阻害しかねない。原油相場の高騰が止まるかは依然不透明だ。

一覧ページへ戻る