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米国、天然ガスも「悪者」の兆し 火力発電に逆風:日本経済新聞(11/25)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN155770V11C21A1000000/

 

 

米国の自治体の間で「脱・天然ガス」とも映る政策が目立ち始めた。天然ガスは再生可能エネルギーと補完性があるうえ、燃焼しても温暖化ガスの排出量が少ないため、脱炭素化に向けた「つなぎ役」の燃料とされている。米国で吹くガスへの逆風は、日本にも大きな影響を及ぼす。

10月末、ニューヨーク州のエネルギー関係者の間に衝撃が走った。同州の環境規制当局がニューヨーク市などに電力を供給する2カ所のガス火力発電所の建て替え工事の計画を認めなかったのだ。

連邦制の米国では、州政府のエネルギー政策の影響力が大きい。ニューヨーク州は2040年までに消費する電力のすべてをカーボンゼロにする方針を打ち出しており、火力発電所に反対する環境団体の主張に沿った判断となった。ホークル知事は「我々には将来世代のために排出削減目標を達成する責任がある」と歓迎した。

米国では広大な国土に太陽光パネルを敷き詰めたり、風力発電機をずらりと並べたりすることが可能だ。雨が続いて太陽光による発電量が不足しても別の州から電力を「輸入」することもでき、電源のカーボンゼロを進めやすい。

一方、ニューヨーク州の隣のペンシルベニア州では、排出量取引の導入を検討しており、州議会などで議論が続いている。

ペンシルベニア州での排出量取引は日本企業にとって他人事ではない。米国のシェール革命を受け、日本の電力・ガス会社は15~18年ごろにペンシルベニア州などのガス火力発電所に相次いで投資してきたためだ。同州はガスを大量に産出しており燃料となるガス価格が安いため、ガス火力発電所の競争力が高い。

ある電力・ガス会社の関係者によると、排出量取引が導入された場合、1つのガス火力発電所で1年間の利益の1割以上に相当する数十億円のコスト増につながるという。ガスへの逆風が強まれば、事業性が悪化する恐れもある。

こうした動きは自治体に限らない。米財務省は8月、国際金融機関に対して化石燃料プロジェクトへの融資のガイドラインを公表し、天然ガスの開発・生産への融資に反対する姿勢を明らかにした。「石炭だけでなく、ガスまで悪者扱いするのか」。日本政府関係者の間で驚きが広がった。

米国の「脱・ガス」の動きは、まだ一部で芽が出始めた段階だが、今後の広がり方に目をこらす必要がある。日本も同じように「脱・ガス」を迫られたら、安定した電力供給システムを維持できないからだ。

島国の日本は国土が狭く、米国のように太陽光パネルや風力発電機を大量に設置できない。再生エネの発電量が減っても、隣国から電力を輸入することもできない。日本の燃料別の電源構成でガス火力の割合は3割超と最も大きい。政府はエネルギー基本計画で30年でもガス火力は20%を占めるとの見通しを掲げる。

脱炭素の流れでエネルギー政策は国際協力が重要になり、自国だけで決める時代ではなくなってきた。日本がガスを巡るルール作りで後れを取れば甚大な影響を受けるだけに、米国の動きをきめ細かく分析していく必要がある。

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